Story
ストーリー
「私は君に特別な物語を提供できる。通常では知りえない物語だ」──まだ名前しか知らない男からのあやしげな申し出を、ヴァレリア(ミカエラ・ラマッツォッティ)は断ることが出来なかった。映画プロデューサーの秘書として働くヴァレリアは、秘かに人気脚本家アレッサンドロ(アレッサンドロ・ガスマン)のゴーストライターを務めているのだが、最近はネタも尽き、アレッサンドロから急いでくれと催促されていたのだ。
謎めいた男の名はラック(レナート・カルペンティエリ)、ヴァレリアの影の仕事も、母親のアマリア(ラウラ・モランテ)と二人で暮していることも、すべて把握しているらしい。 1969年に世界を震撼させ、今も未解決の〈カラヴァッジョの名画「キリスト降誕」盗難事件〉が、実はマフィアの仕業だったとラックから聞かされたヴァレリアは、恐るべき事件の裏側をプロットにまとめる。
「みんな集まれ、傑作の誕生だ!」──「名もない物語」というタイトルがつけられたプロットを読んだプロデューサーは大興奮し、たちまち映画化が決まる。監督には引退を表明していた巨匠クンツェ (イエジー・スコリモフスキ)が就任し、中国から多額の製作費が出資されることも決定した。
ところが、昏睡状態に陥ったアレッサンドロが、空港の駐車場で発見される。プロデューサーにはシナリオを書くと嘘をついて、大勢いる愛人たちの一人であるイレーネとバカンスを楽しんでいたのだが、マフィアに誘拐され、事件の真相を誰から聞いたのかと尋問されたのだ。もはや映画製作会社にも、マフィアの魔の手は及んでいた。
報せを聞いたヴァレリアは、罪の意識といろいろあったが消すことのできないアレッサンドロへの愛情から、シナリオを完成させようと決意する。アレッサンドロのアドレスからプロデューサーに、“ミスター X”の名前で続きを送信することにしたのだ。
あらゆる手を使って、“ミスター X”が誰なのか暴こうとするマフィア。ヴァレリアはラックの協力のもとに物語を書き続ける一方で、シナリオ完成を待たずに開始されたシチリアでの撮影に、制作進行として同行する。
いよいよシナリオが結末を残すだけとなった時、ヴァレリアは気づく。ラックがシナリオだけでなく、現実でも「キリスト降誕」盗難事件を解決しようとしていることに──。果たしてラックの正体は? 50年の時を経て、名画は発見されるのか?