INTRODUCTION

若い女と中年男
孤独な二人を結びつけたのは“鹿”の夢
ファンタジックでリアルな愛の物語

ハンガリー、ブダペスト郊外の食肉処理場。代理職員として働くマーリアはコミュニケーションが苦手で職場になじめない。片手が不自由な上司のエンドレは彼女を気に掛けるが、うまく噛み合わず…。そんな不器用な二人が急接近するきっかけは「同じ夢を見た」ことだった。恋からはほど遠い孤独な男女の少し不思議で刺激的なラブストーリー。

2017年ベルリン国際映画祭
金熊賞<最高賞>など4冠の快挙!
東欧の鬼才、18年間のブランクから
鮮やかに復活

監督は長編デビュー作『私の20世紀』(89)がカンヌでカメラドール<最優秀新人賞>を受賞した、ハンガリーの鬼才イルディコー・エニェディ。本作では人間の孤独に寄り添いながらも、自分の殻から一歩踏み出す勇気を与えてくれる優しい物語を紡ぐ。18年ぶりに発表した長編映画である本作は見事ベルリンを制し、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされるなど、賞レースで快進撃を続ける。本国ハンガリーでは大ヒットを記録し、昨年3月2日公開から1年以上経った現在(2018年3月)もロングラン上映中である。

不思議な世界観にリアリティをもたらした
透明感のある新星女優と
演技未経験のベテラン編集者

透き通るような美しさを持つヒロイン、マーリアを演じるのは、主に舞台で活躍する新星アレクサンドラ・ボルベーイ。本作の熱演で、イザベル・ユペールやジュリエット・ビノシュを抑え、ヨーロッパ映画賞最優秀女優賞を獲得する快挙を果たした。彼女が恋する上司、エンドレ役は俳優ではなく、ハンガリーの劇場で11年に渡りドラマトゥルクとして活躍した後、著名な出版社で20年間、編集発行人を務めていたゲーザ・モルチャーニ。監督からその存在感とカリスマ性を買われ、初めての演技に挑み、現実味のある男性像を作り上げた。