STORY
カタルーニャ州ジローナにある著名な彫刻家・ジャウメの邸宅に、画家のペトラがやってくる。ジャウメの妻・マリサに「アトリエでジャウメと作品制作をする」と挨拶するペトラだが、彼女の本当の目的はジャウメが自らの実の父親かどうか確かめることだった。創作活動のかたわら、マリサや、ジャウメの息子で写真家のルカス、ジャウメ一家の家政婦・テレサとその家族など、ジャウメの周囲の人間と親交を深めていくペトラ。そのうちに、彼が権力を振りかざす、冷酷な人物であることが浮き彫りになってくる。ある日、テレサが謎の自殺を遂げる。皆が悲しみに暮れるなか、テレサの死に関係する、父ジャウメの非道な秘密を知ってしまったルカスは家族のもとから去っていく。やがてペトラは一家の悲劇の連鎖に巻き込まれていくのだった……
COMMENT
何を感じ、どう悟ればいいのかしら?!人それぞれの切り札の使い方。憎々しい男を巡る人間模様のパズルが埋まったようなバラバラになったような……。雄大な景色の中の絶望は人をちっぽけにしてしまった。不思議なEND(エンド)になぜか安堵(アンド)した私。
萬田久子(女優)キメ細かい人物設定、過不足ないシナリオ、お見事。パズルがぴったり嵌る感じ。さらに個人的感想言えば、初の演技という素人オッサンの吐き気を伴う存在感がスゴい……。
会田誠(美術家)浮遊するカメラは神なのか悪魔なのか?愛なのか試練なのか?運命という見えない糸が観るものを宿命という迷路へといざない、心と体を静かに縛り上げていく。やがて、観ている者が天空へと浮遊し解き放たれた時無常の笑みがこぼれる。
奥田瑛二(俳優、映画監督)ギリシャ悲劇は究極のファミリー・メロドラマと盲信させる素材を見守る眼の静謐。その澄んだ厳しさに緑、風、自然のおおらかさを拮抗させて物語る監督ハイメ・ロサレス!じわじわと迫りくる才気に陶然と惹き込まれた。
川口敦子(映画評論家)つらくて悲しくて、でも深くて宿命的で時に素晴らしい人間関係。スペイン映画の真髄を見せつける傑作。
佐々木俊尚(ジャーナリスト)"上級国民"の手強さは日本もスペインも同じ……。どうやったら立ち向かえるのか、この映画にヒントが隠されています。
辛酸なめ子(漫画家、コラムニスト)ミノタウルスのような怪物的男の王国に果敢に侵入し、真実を求めるペトラ。彼女はテセウスの助けを借りず、自らがテセウスとなって怪物に立ち向かう。虚偽を見抜こうとする彼女の勇気と眼差しの美しさが印象的だ。
野谷文昭(東京大学名誉教授・スペイン語圏文学)ピカソやガウディを生み出したスペインのバルセロナがあるカタルーニャ地方。その美しい風景の中で繰り広げられる人間模様。ヒロインはアーティストとしての新たな領域を生み出す苦悩と自身のルーツを探していく。淡々と過ぎていく日常と異常な事件。それぞれがアートを追求していく異なるプロセスも興味深いものがある。
和多利浩一(ワタリウム美術館 代表)視覚はこんなに孤独で静かなのに心はザワザワとコルチゾールが出まくる…。作品の出口まで…あなたもきっと面白いはず!私はもう一度観たい(笑)
風吹ジュン(女優)小説仕立ての実験的なアプローチが、本作をより面白く魅力的にしている。
Sight and Sound緻密に計算された構成が観る者を不思議な迷宮へと誘う。
El Mundo現代におけるギリシャ悲劇。必見!
Macguffin007